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サインの話をしたい。デザインをすることにおいて、価値を高めてくれる関係企業があります。そのひとつがサイン業者ではないでしょうか。最近のサイン業界について話を聞くと、サインの制作、取り付けに限らずWEB、映像制作まで幅広く対応してくれる会社も増えているとのこと。サイン業者さんの手仕事で私たちの仕事にスポットがあたり価値を高めてくれることもあり、欠かすことが出来ない業者さんです。そんなサイン業者さんとのやりとりを書きたいと文章を考えていましたが、少し見苦しい余談を挟みます。
添付している写真は同期と一緒にチャレンジした誇れる案件。本文とあまりリンクしていません。予めご了承ください。
時はさかのぼり、初めて業界に足を踏み入れた頃、正直、環境は決して良いとは言えませんでした。特に地元のこの業界は、長時間労働や低賃金、仕事は盗んで覚えろといったような状況で、チームプレーではなく、個の時代。先輩はスキルは教えてくれませんし現在のようなリモートワークや多様性が浸透しているなど皆無。ルッキズムばしばしでしたね。身なりだけは自由度は高いですが、苦行を強いられる状態だったと自分は捉えています。入社の機会を得たこと自体が幸運だと言われ、それも事実だと思いますし感謝しています。でも辛かった(笑)ほぼほぼ左利きのエレンと同じで、大企業ではなくローカルであの状況が起こっているという感じ。大変なのはデザイン業界だけではなかったと思いますがとにかく時間の拘束が凄かった。
私自身がこの業界で働くことを決めたのは自己決定であり、無知ながらも自分自身で選んだ道。誰も悪くはないという事を前置きし話は進みます。
新入社員時代、私には夢や希望がありませんでした。同じデザイン業界に同期もいませんでした。そんな時、私と同じタイミングで取引業者さんに入社した人がいました。ここからその人を「同期」と記します。同時期から働くことになるのですが私にとってそれが本当に幸運となりました。バチバチすることもなくスムーズに仲良くなれた唯一の同期。
取引業者である同期の存在
若い頃、私の素行も酷いものでクビになりかけたり、時が経過し色々あって辞めようとしたり、退職願を出したり、私が壁を目の前にしたとき相談に乗ってくれて話を聞いてくれる同期。吐き終わるまで聞いてくれる唯一の人。でも私も聞いていたりもしたので、お互い様なはず。
私が勤めていた会社はあまり社内交流イベントもなく、それがよかったといえばよかったのですが、それを知ってか知らずか同期の会社からキャンプに誘っていただいたり、勉強をしに遠出したり、私を講師に招いてSNSの勉強会を開催してくれたり、出不精で厄介な性格の私をよく理解していて、表に出してくれる人でもありました。時にはめちゃくちゃ叱ってくれたりもするんですがその後のリカバリーもちゃんとしてくれて、気遣いの人。スキルもトレードできたり最高の存在でした。
泣きそうになったプロジェクトでの同期のサポート
私にイニシアチブがない状態で任されたプロジェクトがありました。サイン業者が数社入り取り回しが難しい状況でのデザイン管理と制作業務。年齢も若かったですし、私の経験不足もありましたが、なによりイニシアチブがない状態で悪戦苦闘。一部の業者さんを怒らせてしまったり。徹夜も多かった、オープン目前に店舗に張り付きサインの取り付け。そんな私の横で同期がサポートしてくれていました。オープン前日、店舗関係者と私の上司も帰宅し、静まった真っ暗な空間に2人で居残り、夜通しの作業。
店内のゴミ箱すべてにサインを貼るという残されたミッション。これが地味に大変で…臭いもきつくてやりたくなくて「無理だね、もう帰ろうか…」貼り終わらないと思い自分が諦めて発した言葉。「頑張ればオープン前に終わるよ」そんなことを言ってくれた気がします。「作るのは誰でも出来る。でもね完成させて、お金をもらう所までやるのが私たちの仕事でしょ」刺さる言葉のパンチライン。そんな励ましを頂き、スープが残留する臭いカップラーメン専用のゴミ箱とタバコの吸い殻の入ったゴミ箱のサインを2人で剥がし、新しいサインを貼りました。あの時の臭いは忘れません。作業が終わったのは確か午前10時頃。同期が言ったとおりオープン前に間に合いました。
同期だったそのひとは私よりずっと前にプロの思考を持っていたんですね。
とても感謝しています。
それから時が経ち、いま。
新しい環境に身を移してからも関係性は変わりませんでした。感謝っていうと安っぽいですが本当にありがたいですよね。
自分が自慢できる仕事のそばにいつもいて欲しい。見ていて欲しい、これからもかなうなら。「上山氏、相変わらず尖ってるねー、でも私は好きだよ」「ん、他の人には伝わらないってこと?いやいやいやいや、なんでやねん」そんなくだらないやりとりをしていたい。ずっと。
同期のけだるい立ち上がりの会話、興奮気味になったときの声のトーン、ここぞという時の神対応と手さばき、甘えてくる仕事依頼、そんな時は無料で対応することになるのですが(笑)私にとって大切な同期とのよき思い出。そんな思い出がもっと続けばいいのに。コミュニケーションが不得意な自分に関わってくれる数少ない人、友人とは言いがたいかも知れませんが、私にとってかけがえのない人。
そんな同期との話でした。ありがとう本当に。
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