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新しいこと / bebop commercial / 侍ジャパン vs ソフトバンク戦の放送枠で流れるbebopの15秒TVCMを制作しました

新しいこと / bebop commercial / 侍ジャパン vs ソフトバンク戦の放送枠で流れるbebopの15秒TVCMを制作しました

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ポストプロダクションから、WBC強化試合の企画CM枠があると聞いた。出稿できそうな企業を探していた。その瞬間、ぼくの中で「テレビってbebopでも買えるのかな?」みたいなスイッチが入った。ローカル枠だとしても、地上波で流れる15秒って、やっぱり特別だ。それに「こういう機会があるなら、協力したいな」と思った。

 

でも、CMを出して自分自身仕事が欲しい、という話でもなかった。もちろん仕事が増えたらありがたい。でも、それが主目的になった瞬間、たぶん全部が嘘っぽくなる気がした。だから今回は、実験にした。15秒を「スペシャルなチケット」みたいに扱うことにて、やってみたかった表現を、チームで試すための、贅沢なチケット。

 

制作までの納期が短かった。短いというより、短い上に「テレビ」だった。いつものSNSやWeb動画と同じ気持ちでやると、たぶん失敗する。そういう種類の緊張があった。

プリプロダクションに素材を持ち込んで、After Effectsで編集を開始した。いつも通りの手順のはずなのに、その日は画面がちょっとだけ違って見える。たぶん、テレビという言葉が背中に貼りついてたからだと思う。たった15秒。なぜか長く感じる。「ここに入るものは、全部、見られる」みたいな圧がある。

このために制作した3つのジェネレーター素材をはめてみた。粒子拡散、アスキーアート、ドットモーション。どれも、ぼくの中ではまだ実験台の上にいる表現。正直、もっと素材に対して浮くかと思ってた。素材だけが主張して、CM全体がバラけてしまうかもしれない。そういう不安が、ずっと片隅にあった。でも、意外と馴染んだ。というより、馴染ませにいけた。動きの速度、余白の取り方、タイポの出し入れ。ひとつずつ整えていくうちに、素材が「表現」に変わっていった。最初から完璧にハマったわけじゃない。むしろ、何度もズレた。ズレたぶんだけ、どこを直すべきかが見えて、整っていった。なんとか収まった、という言い方もできる。でも、収まっただけじゃなくて、ちゃんと居場所を作れた感じがある。あ、これはいける。編集していて、途中でそう思った。「完成させられる」じゃなくて、「届く」かもしれない。15秒の中に、ちゃんと温度も、韻も入れられる。情報だけじゃなくて、気配を置ける。しかも、チームでつくった気配。満足、って言葉は軽い。軽いけど、今回はほんとにそう言っていい気がしている。仕上がりには満足している。誰かに褒められたからじゃない。自分たちが、やりたかったことにちゃんと手を伸ばせた、という満足。送枠に合わせて、野球の匂いも実装できた。

今回の枠は、侍ジャパン vs 福岡ソフトバンクホークス(ひなたサンマリンスタジアム)。野球って、ただのスポーツじゃなくて、音や間の文化でもあると思う。打球音のあとに来る、一瞬の静けさ。ベンチの空気。スタンドのざわめき。それがテレビを通すと、少しだけ抽象化されて、でも確かに残る。放送に合わせたぼくなりの「野球っぽさ」。企画に合わせた韻を踏んだbebopのイメージ。完全出力。自分の美意識の癖みたいなものを、15秒に圧縮。正直、自己満足かもしれない。普段は企業のCMをつくっていて、まさか自社のCMを本気でつくる日が来るとは。自分のことになると、途端に難しくなる。正解がない。

クライアントがいないから、逃げ場もない。照れるし、怖いし、言い訳も増える。「こんなの誰も気にしてないよ」って、自分で自分を小さくしたくなる。だから苦しかった。でも、向き合ってよかった。向き合った結果、思ったより自分はしつこかったし、思ったより周りの人が手を貸してくれた。ひとりでやってるつもりでも、結局、ひとりじゃできない。その事実が、変に優しく残った。自分の人生に、何かひとつ、ちゃんと残せた気がした。テレビに流れるのは15秒。でも、残ったのは映像だけじゃなくて、「やりたかったことを、やった」という感触そのもの。向き合ったからこそ、ひとつ気づいた。自分ひとりでやった顔をしてる仕事ほど、だいたい危うい。今回みたいに時間がないときほど、なおさら。プリプロダクションで素材を渡した瞬間から、もう自分のものだけじゃなくなっていった。編集で整えてくれる人がいて、進行で交通整理してくれる人がいて、途中で迷ったときに「それ、いけると思う」って言ってくれる人がいて。その声があるだけで、画面の怖さが少し薄くなる。あの感覚は、毎回、ちゃんと助けられてる。

たぶん、感謝って、最後に一言で済ませるには重い。「ありがとうございました」だけじゃ足りない。でも、長く語ると嘘っぽくなる。だから、ここは正直に。今回は、ぼくがやりたいことをやった。やりたいことを、やりたいようにやらせてもらった。それを許してくれる人がいて、成立させてくれる人がいた。ディレクションは自分。でも、それ以外は、自分の手だけじゃ届かない場所を、みんなが埋めてくれた。デザインが一段階、画面を強くしてくれて。タイポが、言葉をリズムに変えてくれて。編集が、15秒を「作品」にしてくれて。進行が、無茶なスケジュールを現実にしてくれた。こういうことって、普段の案件でも起きてる。でも、自社のCMだと、余計に刺さる。「自分のために、誰かが時間を使ってくれている」って事実が、逃げられなくなるから。ありがたいのに、ちょっと怖い。その怖さごと、今回は受け取れた気がする。忘れないCM。

Credit
Direction:Kamiyama
Design:Hanada
Typography:KawakamiPre-production
Edit:Soejima
Production management:Kanuka

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YouTubeでは2月23日公開予定です。

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