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momokawa “shizukunoki chocolate package” – Package Design by bebop / 桃川「しずくのき」パッケージ

momokawa “shizukunoki chocolate package” – Package Design by bebop / 桃川「しずくのき」パッケージ

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日本酒ブランド桃川から生まれたバレンタイン向け新商品〈ほおそめる〉シリーズ。その一つである「しずくのき」のお菓子パッケージデザインを、bebopが担当しました。本企画では、コストを抑えつつブランドの世界観を成立させる設計が求められました。採用したのは、紙一枚で構成するスリーブ構造。余分な加工を加えるのではなく、最小限の構造で最大限の印象をつくる設計です。型抜き加工と特色印刷を組み合わせ、印刷コストを抑えながらも量産時に品質が安定する構造を意識。機能性とデザイン性を両立させた、bebopによる菓子パッケージデザイン事例です。

このパッケージの核となるのは「回転」という動きです。外側のスリーブには型抜き加工を施し、その内側の本体パッケージにはステッカーを配置しています。スリーブをそのままの位置で見ると、文字はまだ完成しません。スリーブをくるりと回転させると、型抜きの窓と内側の文字がぴたりと重なり、「すき」という言葉が浮かび上がる仕組みになっています。つまり、止まっている状態では見えない言葉が、動かすことで現れる構造です。視覚的なギミックでありながら、意味も持たせています。バレンタインという場面では、想いはいつもストレートに伝えられるとは限りません。少しのきっかけや勇気があって、はじめて言葉になる。その感情のプロセスを、スリーブの回転というシンプルな物理的動作に置き換えました。

加工を増やすのではなく、構造の重なりで表現する。一枚の紙と一つの動きの中に、感情が立ち上がる設計です。今回のパッケージは、華美な特殊加工に頼るのではなく、「重なり」と「動き」によって意味を生み出すことを目指しました。スリーブ、型抜き、印刷。その最小限の要素をどう配置すれば、見るだけでなく体験になるのかを検証しています。また、構造上どうしても固定用のシールが必要でした。通常であれば、封緘という機能だけを担うパーツです。しかし今回は、そのシールをデザインのレイヤーとして組み込みました。隠すのではなく、積極的に参加させる。スリーブ、型抜き、印刷、そしてシール。それぞれが独立した役割を持ちながらも、重なり合うことで意味が完成する多層構造。見る角度や触れ方によって印象が変わる設計にしています。   コスト制限の中で、いかに魅力的な商品に感じてもらえるか。組み立て構造を減らすことでコストを抑え、加工を足すのではなく、設計で解決する。その判断の積み重ねが今回の形です。桃川の日本酒が持つ繊細で透明感のあるニュアンスと、菓子のやわらかく温度のある印象。その間にある微妙なバランスを、紙一枚の動きの中に閉じ込めました。少しだけ勇気のいる言葉を、動かしたときにだけ現れる形で。   ビジュアル面でも、イラストレーターさんと検証を重ねました。回転という構造に無理なく寄り添いながら、かわいすぎず、かっこよすぎず、凛とした佇まいを保つイラストを模索。イラストの図案の中にも、「すき」の文字をさりげなく忍ばせています。一見すると模様の一部のように見えますが、よく見ると!平面で見たときと、回転させたときとで印象が破綻しないことも重要な検証ポイントでした。「しずくのき」というネーミングも、この設計と連動しています。しずくのき。すき。言葉が静かに連鎖するような余白を残しながら、声に出さなくても伝わる構造を組み込みました。手に取る。回す。気づく。その一連の動作そのものがメッセージに。贈る前の小さな緊張と、渡したあとの静かな余韻。バレンタインという時間にそっと寄り添うパッケージです。

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