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武内印刷に息づく伝統と職人の手仕事 、八戸の活版印刷の世界

武内印刷に息づく伝統と職人の手仕事 、八戸の活版印刷の世界

静止したような空間に漂うインクの香り、窓から差し込む柔らかな光、そしてどこか懐かしさを感じさせる印刷機の音が響く。今回訪れたのは、八戸市の武内印刷さんです。久しぶりに紙とインクが織りなす世界、そして活版印刷の奥深さに触れ、とても新鮮な気持ちになりました。コロナ禍で少し遠ざかっていた印刷所との距離感や熱が、また少しずつ戻ってきたように感じます。実は、コミック『本好きの下剋上』が大好きで、マインが夢見た活版印刷機を思い浮かべながら見学していました。物語の中で、本を作ることに情熱を注ぐマインの姿と、実際に目の前で動く活版印刷の道具や工程が重なり、その場の空気まで特別なものに感じられました。効率化が進む現代において、活版印刷が持つ温かみや手仕事の美しさは、ますます輝いて見えます。こうした伝統的な手法が持つ重みやストーリーを感じながら、好きなものを探求し続ける姿勢の大切さを改めて学ぶことができました。貴重な体験をさせていただき、本当にありがとうございました。

活版印刷は、亜鉛版、樹脂版などの活字を組み合わせて版を作り、紙に押し付けて印刷する技術。デジタル全盛の現代において、紙に残るインクの凹凸や風合いは、手作業ならではの魅力を放っている。特に印圧によって生まれる紙の質感は、デジタル印刷では再現できない特徴のひとつではないでしょうか。

ちなみに、この現場で初めて知ったのが、文字サイズの単位が「号」ということ。普段のデザイン業務では、ポイントや級、ピクセル、インチなどを使うことが多いのですが、ここでは「号」が基準になっていました。たとえば6号は約8ポイントに相当するとのことです。正直、知らなかったので、勉強不足を痛感しました。

今回、八戸在住のデザイナー・高坂さんのご案内で、武内印刷さんを訪問する機会をいただきました。高坂さんは、独自の視点とアイデアで地域に新しい価値を生み出しているデザイナーで、以前からお話ししてみたいと思っていた方です。そんな高坂さんがデザインされた名刺が、職人さんの手によって印刷されていく過程を、間近で見学させていただきました。

活字を組み、紙質やインクの濃さ、文字同士のバランスを何度も調整しながら進められる印刷の様子は、単なる「作業」ではなく、まるで「紙との対話」をしているように感じました。職人の手仕事から生まれるものには、独特の存在感と温かみが宿っています。

武内印刷さんでは、伝統的な活字だけでなく、亜鉛版や樹脂版も取り入れながら、時代のニーズに応じた柔軟な印刷を行っています。この柔軟さこそが、「今の活版印刷」を支えているのだと感じました。

効率化が進み、便利なツールがあふれる時代だからこそ、時間と手間をかけて作られるものの持つ意味や価値が、ますます際立っているように思います。

今回の訪問を通じて、「自分の名刺も活版印刷で作ってみたい」という新たな目標が生まれました。紙に触れるたびに、手仕事の重みや温かさを感じられる名刺。そんな特別な一枚を持ちたいと思います。

八戸には、まだまだ魅力的な場所や人がたくさんいることを改めて実感しました。紙とインクの世界に興味がある方は、ぜひその扉を開けてみてください。豆知識として、ネットプリントや他の印刷所で特殊加工を施した紙を用意し、持ち込んで印刷を依頼することが可能とのことです。制作の表現領域が一層広がり、独自性あふれる作品を生み出すきっかけとなりそうです。素材に込めた工夫が、受け手にしっかりと伝わるのも魅力です。創作をもっと楽しむための一歩として試してみたいですね。

この記事を読んで、少しでも活版印刷の魅力を感じていただけたなら幸いです。デジタルでは決して味わえない特別な世界が、きっとあなたを待っています。(久しぶりに一眼で写真を撮りました)

武内印刷
〒039-1103 青森県八戸市長苗代1丁目4-22
TEL.0178-28-2663

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